株式会社荏原製作所様|海外拠点へのERP導入を計画通りに実現し、後続拠点への展開を支える標準化を推進
真空ポンプやCMP装置(半導体ウェーハ表面を平坦化する研磨装置)を中心に、グローバルで事業を展開する株式会社荏原製作所の精密・電子カンパニー。現在、荏原製作所が全体で進める共通ERP(企業の経営資源を一元管理するシステム)導入の一環として、海外グループ各社への展開を進めています。
複数拠点への導入を並行して進める中、人材や体制面の課題を背景に、INTLOOPがプロジェクトに参画しています。
同社の奈佐様、山﨑様と、当社の担当コンサルタントである浅川に、プロジェクトの背景や支援の実態、そしてERP導入の先に見据える展望を聞きました。
写真中央:株式会社荏原製作所 精密・電子カンパニー 業務基盤戦略統括部 ITシステム部 グローバルオペレーション課 山﨑 将史様
写真右 :株式会社荏原製作所 精密・電子カンパニー 業務基盤戦略統括部 ITシステム部 部長 奈佐 和也 様
課題
- 海外グループ各社へのERP導入を並行して進めるための体制確保が難しかった
- ERP展開を早期に完了させるため、全体スケジュールを維持する必要があった
- 不確定要素の多いプロジェクトの中で、柔軟に対応できる支援体制が求められていた
効果・成果
- 海外グループ各社に専任担当を置き、複数拠点を並行して支援できる体制を整備
- 中国のグループ会社で、計画していたスケジュール通りにERP稼働を実現
- 後続拠点でも一定の品質で導入できるよう、導入プロセスの標準化を推進
Contents
- 全社共通ERPを海外グループ7社へ。並行展開を進める中で直面した人材・体制の壁
- 「まさに求めていた提案」――言葉にし切れない要望までくみ取る提案力
- 関係者の間に生まれる「隙間」を拾い、補完し合う連携でプロジェクトを前進させる
- 計画通りのERP稼働を実現し、データ活用へつなぐ。標準化の先に描く経営の高度化
全社共通ERPを海外グループ7社へ。並行展開を進める中で直面した人材・体制の壁
――まずは、精密・電子カンパニーの事業内容と、お二人が所属するITシステム部について教えてください。
奈佐様:
荏原製作所の精密・電子カンパニーは、1985年に新規事業へ挑戦する「カンパニープロジェクト」の一つとして始まった真空ポンプの開発・生産を原点に成長してきました。
現在は、半導体製造工程で使われるCMP装置の開発・製造にも事業を広げ、真空ポンプとCMP装置を事業の柱としています。また、メンテナンスや改造など、使い続けていただくためのサービス&サポートも展開しています。
私たちITシステム部は、そうした事業活動をITの面から支える部門です。設計者が使うCADや、工場のMES(製造実行システム)、営業の受注システムなど、事業のさまざまな場面で使われるシステムの開発・運用を担っています。事業部門がより効率的に業務を進められる環境を整えることが、私たちの役割です。

――今回のプロジェクトであるERPの導入に至るまで、どのような経緯や課題がありましたか?
奈佐様:
ERPの導入は昔からの悲願でした。荏原製作所には、精密・電子カンパニーのほかにも、水ポンプや環境関連の設備など、それぞれ異なる事業を担うカンパニーがあり、全体で5つのカンパニー体制をとっています。各事業に合わせてシステムを構築してきたため、基幹システムもカンパニーごとの個別最適が進んでいました。
ただ、会社や事業の規模が大きくなるにつれて、全社としてシステムの標準化や統一を進め、共通の基盤を整える必要性が高まっていきました。しかし、大きな投資や人材の不足が壁となり、なかなか実現には至らなかったのです。
そうした状況が続く中、2020年以降になってITへの投資環境が整い、専門性を持つ人材も加わったことで、ようやくERP導入の計画が具体化しました。現在は、荏原製作所全体で共通したERPの導入を進めています。
――今回の全社ERP導入プロジェクトでは、ITシステム部はどのような役割を担っているのでしょうか?
山﨑様:
ERP自体の導入は、本社のコーポレート情報部門が中心となって推進しています。その中で、ITシステム部は、精密・電子カンパニーのグループ各社へのERP導入に伴う周辺業務システムの対応から、稼働後の支援までを一貫して担っています。
――どのような課題から外部パートナーの支援を検討したのですか?
山﨑様:
精密・電子カンパニーでは、2025年に国内拠点へのERP導入が完了し、その後は海外グループ7社への展開を進める計画でした。ただ、各社のIT部門は人員が十分ではなく、私たちITシステム部からの支援が必要な状況でした。
さらに、全体の導入を早期に完了するには、複数のグループ会社への導入を並行して進めなければなりません。一方で、私たち自身も通常のシステム開発や運用を抱えているため、各拠点に専任メンバーを継続的に配置することは難しく、体制面が大きな課題になっていました。
すでに海外グループ1社への導入は進めていましたが、残る6社への展開をスケジュール通りに進めるには社内だけでは難しいと判断し、継続的にプロジェクトを支援する外部パートナーを検討し始めました。

「まさに求めていた提案」――言葉にし切れない要望までくみ取る提案力
――外部パートナーを探すにあたって、どのような役割を担ってもらいたいと考えていたのでしょうか?
山﨑様:
今回、ERPの導入自体は本社のコーポレート情報部門が中心となって進めているため、私たちが求めていたのは、関係者と連携しながら、精密・電子カンパニー側の立場で海外グループ各社への展開を一緒に進めてくれるパートナーでした。
このプロジェクトは長期間にわたり、複数の海外拠点を並行して進めます。そのため、人員の変化や地政学的な影響など、当初は想定していなかったことも起こり得ます。
そうした状況でも、プロジェクトのゴールを見ながら一緒に考え、必要に応じて柔軟に動いてもらえることを重視していました。
――今回のご相談に対して、INTLOOPではどのように提案を進めたのでしょうか?
浅川:
最初にお話を伺ったとき、期間が長く、海外グループ各社への導入を並行して進めるなど、不確定要素も多いため、難易度の高いプロジェクトだと捉えていました。
また、RFP(提案依頼書)のように要件が細かく決まっているというよりは、目指していることや課題感を伺いながら、支援の形を整理していく進め方でした。そのため、会話を重ねながら、荏原製作所様がどこに難しさを感じ、私たちに何を求めているのかを確認していきました。
そのうえで、「ここは手を入れた方がいいですね」「こういう支援の方が進めやすいですね」と率直に意見を交わしながら、具体的な提案内容へと落とし込みました。

――最終的に、INTLOOPと一緒に進めようと判断した背景を教えてください。
山﨑様:
一番大きかったのは、「同じ感覚で進められそうだ」と思えたことです。大手企業を含めて何社かに相談していましたが、その中でもINTLOOPさんは、私たちが求めていることをよく理解してくれている印象がありました。
特に印象に残っているのが、最後に受け取った提案書です。私自身は、そこまで深くディスカッションしたつもりはなかったのですが、内容を見たときに「まさに私たちが求めていたことだ」と驚きました。
こちらが話したことを丁寧に拾いながら、まだ私たち自身でも言葉にし切れていなかった部分まで、しっかりと提案に反映されていたのです。そこまで理解してくれているのであれば、同じ目線で一緒に進めていけると思いました。
奈佐様:
INTLOOPさんについては、こちらの意図をくんで進めてくれそうだと聞いていました。実際にやり取りを重ねた山﨑が選んだこともあり、私としても不安なく進められました。
関係者の間に生まれる「隙間」を拾い、補完し合う連携でプロジェクトを前進させる
――INTLOOPの参画後、プロジェクトはどのような体制で進めているのでしょうか?
山﨑様:
INTLOOPさんには2025年4月から参画いただき、先行していた1社を除く海外グループ6社へのERP展開を、全体でおよそ5年かけて進める計画です。
当初は、私とERPに精通した社内メンバーを中心に、INTLOOPさんからは浅川さんを含む6名が入り、海外グループ各社に専任の担当者を配置する体制でスタートしました。
その中で、各社の既存システムの状況把握から、ERP導入後を見据えたシステム構成の検討、必要となる周辺業務システムへの対応、ERP稼働後の支援まで、一連のプロジェクトを通して伴走してもらっています。
現在は、当部からの参画は5名となり、INTLOOPさんの6名と合わせた計11名の体制で、海外グループ各社のIT部門と連携しながら複数のプロジェクトを並行して進めています。
――実際にプロジェクトを進める中で、どのような難しさがありますか?
浅川:
難しさの一つは、関わるステークホルダーが非常に多いことです。精密・電子カンパニーの皆さんだけでなく、本社のコーポレート情報部門やベンダー、海外グループ各社のIT部門や業務部門など、さまざまな立場の方が関わっています。
関係者が多くなるほど、どうしてもコミュニケーションのミスやロスが発生します。伝えたつもりでも認識がそろっていなかったり、関係者の間で情報が十分につながっていなかったりと、一つひとつは小さなことでも、それが積み重なるとプロジェクト全体の進行に影響しかねません。
だからこそ、問題が大きくなってから対処するのではなく、その都度状況を整理し、関係者の認識を合わせながら、影響を最小限に抑えるようにしています。
非常に基本的なことですが、こうした部分に一つずつ向き合いながら、愚直に進めていくことが、私たちに求められている役割だと捉えています。
山﨑様:
そこはまさに、INTLOOPさんに期待していたところです。これだけ登場人物が多いと、誰も拾いに行かなければ、そのまま抜け落ちてしまうこともあります。INTLOOPさんは、そうした部分にも率先して手を伸ばしてくれるため、非常に助かっています。
――そうした難しさに対して、INTLOOPではどのような姿勢でプロジェクトに関わっているのでしょうか?
浅川:
社内でもよく伝えているのが、「イニシアチブを取る」ということです。指示を待つのではなく、プロジェクトに能動的に関わり、必要であれば私たちから考えを示し、関係者と調整しながら決めに行きます。
関係者の多いプロジェクトでは、自分たちなりの意思を示さなければ、なかなか前に進みません。プロジェクトを前に進めることが、私たちが入る価値でもあります。
そのため、役割が明確になっていない部分についても、必要な論点を整理し、関係者に働きかけることを徹底しています。
――ここまで連携してきた中で、どのようなことを感じていますか?
浅川:
私たちが一方的にプロジェクトを進めているのではなく、荏原製作所様にも、私たちが動きやすい環境を整えていただいています。
プロジェクトの開始時には、荏原製作所様の業務や組織、プロジェクトの進め方を理解する期間を設けてくださいました。私自身も海外拠点へ伺い、現地の皆さんと直接お会いすることで、資料だけでは分からない現場の空気感まで知ることができました。
そうした時間を重ねたことで、いわゆるコンサルティングファームとお客様という関係を超えて、「精密・電子カンパニーのITを担う一つのチーム」として動いている感覚があります。
もちろん、私たちだけでは解決できない場面も少なくありません。そうしたときには荏原製作所様にも支えていただき、お互いに補い合いながら進められていることが大きいと感じています。
奈佐様:
私たちの組織は、一人が強く引っ張るというより、周囲と協調しながらプロジェクトを進めることを大切にしています。
その中で、浅川さんのように必要なことを示し、誰の担当か明確になっていない部分まで対応してくれる方がいると、全体がうまく回るのだと思います。INTLOOPさんの進め方は、私たちのカルチャーにも合っていると感じています。

計画通りのERP稼働を実現し、データ活用へつなぐ。標準化の先に描く経営の高度化
――海外グループ各社への展開は、現在どこまで進んでいるのでしょうか?
山﨑様:
INTLOOPさんが最初に参画した中国の合肥拠点では、スケジュール通りにERPを稼働させ、その後もスムーズに運用できています。現在は上海と韓国の拠点を並行して進めています。
また、単に導入を進めているだけではありません。INTLOOPさんから提案いただき、後続拠点でも一定の品質で導入できるよう、マニュアルを含む各種ドキュメントも整備しています。
まだ全体としては道半ばですが、ここまで進んできたことで開始当初に比べると、この先をどう進めていくのかも見えてきました。
――ここまでのプロジェクトを振り返って、INTLOOPの支援をどのように評価されていますか?
山﨑様:
当初の期待通りです。ただ、この「期待通り」がすごいことだと思っています。
多くの関係者が関わり、途中でさまざまな変化も起こるプロジェクトの中で、スケジュール通りに進めること自体、非常にハードルが高いものです。そこにきちんとコミットしてくれたことに、とても感謝しています。
私たちだけでは行き届かないタスクや課題を早い段階で見つけ、状況が変わった際にも、その時々に合った進め方を提案してくれています。そうした対応の積み重ねによって、大きな遅延が発生することなくプロジェクトを進められており、安心感にもつながっています。
奈佐様:
INTLOOPの皆さんは、基本的なことをきちんとされています。会議の場では、自分たちは何をしようとしているのかを説明し、「一緒に協力して進めましょう」ということを相手にしっかり伝えています。
言葉にすると当たり前のことかもしれません。ただ、多くの人が関わるプロジェクトでは、そうした一つひとつの行動が重要です。何か問題があればその都度対応していることも山﨑から聞いており、プロジェクトが進むにつれて、信頼もより高まっています。
浅川:
そのように評価いただき、ありがとうございます。ただ、振り返ると、事前に防げた問題やリスクもあります。だからこそ、月次で振り返りを行い、次に同じことを起こさないための改善を続けています。
いただいている信頼を裏切らないよう、当たり前のことを当たり前にやり切ることを、これからも徹底していきます。
――最後に、今後の取り組みと、INTLOOPへの期待についてお聞かせください。
山﨑様:
まずは、まだ数年続くこのプロジェクトを完走してもらいたいと考えています。同じERPを展開していくとはいえ、グループ会社ごとに特性や環境が異なるため、実際には支援の内容をその都度調整していく必要があります。今後も、それぞれの状況に合わせながら一緒に進めてもらいたいです。
また、先にERPを導入した拠点では、すでに運用が始まっています。これからは導入するだけではなく、システムをどう維持し、安定して運用していくかという課題も出てきます。そうした場面でも、これまで一緒に進めてきたパートナーとして、アドバイスや支援をお願いできればと思っています。
奈佐様:
ERPは、導入すること自体が目的ではありません。最終的に目指しているのは、グローバルでデータを一元的に把握できる環境を整え、それを経営判断に生かしていくことです。
ERP導入の先にある、データをどう活用し、どう経営に生かしていくかは、さらに難しいテーマだと思っています。ただ、ERPの導入と並行して進めている各種ドキュメントの整備は、次のステップでも生きてくると考えています。
INTLOOPさんには、ERP導入をその先の成果につなげるための支援にも期待しています。
浅川:
ありがとうございます。まずは、残りの海外グループ5社への導入プロジェクトをしっかり完遂することが最優先です。
その先には、山﨑様がお話しされた保守・運用や、奈佐様がお話しされたデータ活用など、新たなテーマもあります。これまで一緒にプロジェクトを進めてきたからこそ、荏原製作所様の状況や考え方を理解したうえで支援できることもあると思います。
今のプロジェクトをやり切り、その先も長くご一緒できればと考えています。
