Event イベント情報
AI時代だからこそ考えたい知財戦略|INTLOOP Ventures(2026年3月)
- 開催日
- 2026.3.26
- 開催場所
- INTLOOP本社内 Cafe INTLOOP
2026年3月26日、INTLOOP株式会社が運営するスタートアップ支援プログラム「INTLOOP Ventures」は、スタートアップにおける知的財産戦略をテーマとしたイベントを開催しました。AI技術の進展や競争環境の激化を背景に、特許や技術資産の活用は、事業成長や競争優位性に直結する重要な経営判断の一つとなっています。
本イベントでは、弁理士法人正林国際特許事務所 副所長・シニアパートナーの齋藤拓也氏を迎え、スタートアップ・事業開発担当者が押さえるべき知財戦略の基本から、事業成長に結びつく「攻めの知財」の活用方法、さらにAI時代における知財戦略の考え方まで、実例を交えながら解説いただきました。
また後半のパネルディスカッションでは、ON&BOARD株式会社 Partnerの長谷川俊介氏が登壇。キャピタリストとして数多くのスタートアップを支援してきた長谷川氏の視点も交えながら、スタートアップの知財戦略について、実務に即した意見交換が展開されました。
知財を専門領域として切り離すのではなく、事業成長を支える経営戦略の一つとして捉え直す機会となった今回のイベント。本記事では、当日の内容を振り返りながら、スタートアップにおける知財戦略の実践的なポイントをお伝えします。
INTLOOP Ventures イベントレポート
AI時代だからこそ考えたい知財戦略

【実施日時】
2026年3月26日(木)18:00〜20:30
【タイムテーブル】
17:30〜18:00 受付
18:00〜18:15 オープニング
18:15〜19:00 トークセッション「AI時代だからこそ考えたい知財戦略」
19:00〜19:30 パネルディスカッション「起業家に聞く!スタートアップ知財戦略のリアル」
19:30~19:40 Q&A
19:45〜20:30 ネットワーキング・懇親会
【実施場所】
INTLOOP本社内 Cafe INTLOOP
〒107-0052
東京都港区赤坂2丁目4−6 赤坂グリーンクロス27F Cafe INTLOOP
オープニング
イベントの冒頭では、INTLOOP株式会社の廣瀬が、同社の事業概要とスタートアップ支援の取り組みについて簡単なプレゼンテーションを行いました。
2005年に創業したINTLOOPは、昨年20周年を迎え、現在は連結で約1,500名規模へと成長。売上高は335億円に達し、直近10期のCAGRは47.2%と、高い成長率を維持しています。
同社の特徴は、正社員によるコンサルティング・エンジニアリング人材と、約5万5,000名のフリーランスネットワークを組み合わせたハイブリッド型の支援体制にあります。コンサルタントやPMO、エンジニアといった専門人材を自社で抱えつつ、案件や課題、予算に応じて柔軟に体制を構築。単体での支援からチーム単位でのデリバリーまで対応し、主にDX領域を中心とした企業変革を支援しています。
続いて、本イベントの基盤ともなっているスタートアップ支援コミュニティ「IVIC(INTLOOP Ventures Innovation Community)」についても紹介しました。IVICのコンセプトは、スタートアップの成長に必要な「ヒト・モノ・カネ」を総合的に提供すること。特にINTLOOPの強みである「ヒト」の支援を軸に、VCとのネットワーキングやSaaSなどのリソース提供を通じて、スタートアップの成長を後押ししています。
現在、IVICのSlackコミュニティには約300名が参加し、その6〜7割をスタートアップ関係者が占めています。コミュニティ内では、イベント情報の共有に加え、資金調達に関する相談やビジネスマッチングなども行われており、実務に直結する場として活用されています。
2025年4月以降、IVICではイベントを月1〜2回のペースで継続的に開催しており、勉強会に加えて、VCや事業会社とのマッチング機会の創出にも注力。今後は、大企業とスタートアップをつなぐ取り組みも、さらに強化していく計画です。
今後も、INTLOOP単体のソリューションにとどまらず、スタートアップとの協業を通じて支援の幅を広げながら、中長期的な成長目標の実現を目指していきます。
「INTLOOP Ventures Innovation Community(IVIC)」とは
「INTLOOP Ventures Innovation Community(IVIC)」は、ヒト・モノ・カネといった経営リソースを、参加企業同士が提供し合うことで、スタートアップの成長を支援するコミュニティです。
Slackを活用した常設のオンラインコミュニティに加え、スタートアップや投資家、経営リソース支援を行う企業が交流できるミートアップイベントを定期的に開催し、ネットワーク構築の機会を提供しています。
IVAサイト:https://intloop.com/intv-accelerator/
IVICサイト:https://www.intloop.com/intloopventures/
トークセッション
本セッションでは、スタートアップにおける知財戦略をテーマに、事業成長における知的財産の位置づけや、その活用の在り方について取り上げました。
事業成長の鍵を握る経営資源として、知的財産をどのように捉え、活用していくべきか。弁理士法人正林国際特許事務所 副所長・シニアパートナーの齋藤拓也氏より、スタートアップ・事業開発担当者が押さえるべき知財戦略の基本から、事業成長に直結する「攻めの知財」の実践、さらにはAI時代における知財の考え方まで、具体的な事例を交えながら実務に即した視点で解説が行われました。
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【登壇者】
弁理士法人正林国際特許商標事務所 副所長・シニアパートナー
齋藤 拓也 氏

1990年株式会社CSK(現SCSK株式会社)に入社、金融・産業・科学技術計算システム開発に従事、2003年正林国際特許商標事務所に入所。 22年間で600社以上のスタートアップ・中小企業の知財活用によるバリューアップ支援を経験。技術分野は、ICT・ソフトウェア関連発明、ビジネスモデルを中心に、農産品、食品、化学品、機械加工品からDX、AI、IoT、ブロックチェーンまで幅広く対応。スタートアップから上場企業、企業再生、事業承継まで様々な企業ステージを経験。対応分野は、権利化はもちろん、知財戦略アドバイザリ、発明発掘、ビジネスモデル構築・事業化サポート、資金調達サポート、知財経済価値評価、営業秘密管理、契約交渉サポート、係争サポート、知財マネタイズサポートまで幅広い。
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はじめに齋藤氏より、自己紹介と事務所の特徴について簡単に説明いただきました。
齋藤氏:
弁理士の齋藤です。
かつてはCSK(現SCSK株式会社)でシステム開発に携わっており、2003年に正林国際特許商標事務所へ移りました。
現在所属している正林国際特許商標事務所は、約300名規模の組織で、特許庁の審査官出身者が幅広い分野に在籍している点が特徴です。特許の審査や判断プロセスを熟知したメンバーが揃っているため、出願からその先の審査・係争までを見据えた対応が可能な体制となっています。
また、経済産業省出身者や国際標準化に関わるメンバーも在籍しており、知財にとどまらず「ルールメイキング」の観点から事業を捉えている点も特徴の一つです。技術で勝ちながらビジネスで負けるという構造を変えるためには、市場やルールそのものをどう設計するかが重要になります。
その中で、知財は単なる権利保護にとどまらず、事業構造を実現するためのレバレッジの効く経営資源の一つです。さまざまな経営リソースの中でも、知財ほどレバレッジが効くものはないと考えています。
その後、具体的な事例を交えながら、本題となる知財戦略の解説へと移りました。
1. 最近のAIに関する話題
齋藤氏はまず、AIの進展によって顕在化している論点を、「画像・動画」「音楽・音声」「イラスト・デザイン」「チャット(対話システム)・プログラム」の4つの領域に分けて整理しました。
「画像・動画」の領域では、AIによって生成された広告表現に対する受け手の反応の違いに言及。技術的な精度が高まる一方で、違和感や拒否感が生まれるケースもあり、コンテンツの受容には単なる品質だけではない要素が影響する点が示されました。また、AIはこの1年で急速に普及し、日常業務においても当たり前の存在になりつつあるといいます。
「音楽・音声」の領域では、音声の無断利用をめぐる問題や、それに対する訴訟の動きが紹介されました。特にアメリカでは、権利侵害に対して迅速に法的対応が取られ、市場のルール形成にも影響を与えている点が特徴的であり、今後の動向を考える上で重要な示唆になると指摘されました。
「イラスト・デザイン」の領域では、クリエイターの作風を学習・再現するAIサービスをめぐる議論が取り上げられました。作風そのものは著作権で保護されないという制度的な前提がある中で、クリエイター側の反発が起きた事例が紹介され、技術と権利、そして感情のズレが顕在化している状況が示されました。
そして「チャット(対話システム)・プログラム」の領域では、生成AIの進化により、開発や業務支援のハードルが大きく下がっている点に言及。ノーコード・ローコードでの開発や、業務の自動化・高度化が進む中で、AIの活用は今後さらに広がっていくと述べられました。
こうした流れを踏まえ、齋藤氏は自社の取り組みとして、発明創出を支援するAIエージェント「発明人®(ハツメイト)」についても紹介しました。
同ツールは、対話形式で発明アイデアの整理やブレインストーミングを行い、特許明細書のたたき台を生成するなど、知財業務を支援するものです。
さらに、先行技術調査や疑似的な審査プロセスの再現など、従来は専門家の知見に依存していた領域にもAI活用が広がりつつあるといいます。こうした変化を背景に、業務の在り方そのものが変わりつつある中で、AIを積極的に取り入れていく重要性が強調されました。
また、AI活用においてはプロンプト設計が重要であり、使い方次第でアウトプットの質が大きく変わる点にも言及。今後、発明の完成度や明細書作成の精度はさらに高まる一方で、最終的な判断やチェックには人の関与が不可欠であるとの見方が示されました。
その上で、AIは使いこなした人ほど成果につながるツールであり、活用によって時間を生み出せると指摘。知財領域においても、AIを前提とした業務へのシフトが求められていると締めくくられました。
2. 特許との関係

(1)ビジネスモデル特許の事例
続いて、具体的な事例として「いきなり!ステーキ」の特許が紹介されました。
この特許は、「ステーキの提供方法」に関するもので、顧客の希望する量をその場で計量・カットし提供する仕組みを含んだビジネスモデル特許です。立食形式や計量・識別の仕組みを組み合わせることで、従来の定量提供とは異なるスタイルを実現しています。
一見シンプルに見えるものの、この特許は異議申し立てを経て最終的に維持されており、事業上の差別化要素として注目されました。こうした特許が参入障壁となり、競争優位性を生み出す要因にもなり得ます。齋藤氏は本事例を通じて、「一見当たり前に見えるレベルでも特許は成立しうる」と指摘。特にソフトウェアやサービス領域では、工夫次第で特許化の余地は十分にあると述べました。
さらに、Amazonの「ワンクリック購入」に関する特許も取り上げられました。
これは「今すぐ買う」ボタンにより、ショッピングカートを介さず購入手続きが完了する仕組みに関するものです。技術的にはシンプルながら、ユーザー体験を大きく向上させる点が評価され、特許として成立しました。
現在は特許期限が切れているものの、「ワンクリックで購入できる体験」はAmazonの代名詞として定着し、機能そのものがブランド価値へと昇華されています。
齋藤氏はこの事例から、シンプルな仕組みであっても価値ある体験を生み出せば特許になり得ること、さらにそれを起点にブランドへと発展させていく重要性を強調しました。
(2)発明ブレストによる攻めの特許の活用
続いて齋藤氏は、特許の具体的な活用方法について解説しました。
発明創出のプロセスでは、アイデアを広げるブレインストーミングが重要であり、実装前の構想段階でも特許出願は可能であると説明。ソフトウェア特許においては、完成したプログラムではなく「どのような処理を行うか」という処理の仕組みや技術的な構成が権利化の対象となり得るため、開発前から権利化を進めることができるといいます。
こうした特許は、事業の成長フェーズに応じて大きな役割を果たします。自社事業をそのまま権利化する「守り」の特許に加え、競合の参入を見据えて先回りする「攻め」の特許を取得することで、参入障壁を築くことが可能になります。
さらに、特許は競合対策にとどまらず、提携やM&Aの場面でも有効に機能します。中長期の事業展開を踏まえた知財設計をすることで、交渉における優位性を確保し、事業連携や買収を有利に進める材料となり得ます。
このように、特許は単なる権利保護にとどまらず、競争戦略や事業拡張を支える「攻め」の経営資源として活用できる点が強調されました。
さらに齋藤氏は、イグジットにおける知財の役割にも言及。スタートアップが売却や上場を目指す際には、将来的に買い手企業が必要とする領域まで見据えて特許を取得しておくことで、企業価値の向上につながります。こうした「攻めの特許」は、売却時には自社事業を守る「守りの特許」としても機能し、交渉を有利に進める要素となります。
また、特許を保有していること自体が、買収側の意思決定を後押しする材料になる点も指摘されました。
続いて、企業間連携の観点から「エコシステム」の構築についても解説がありました。単独での成長が難しい中、他社との協業が重要になる一方で、利害の衝突によって「エコシステム」が「エゴシステム」へと変質してしまうリスクもあります。
こうした課題に対しては、自社とシナジーのある領域で特許を取得し、それを交渉材料として活用することが有効です。特に、無償ライセンスを提示することでパートナーを巻き込みやすくなり、協業関係の構築を促進できるといいます。
このように、知財は競争優位の確立にとどまらず、イグジットやアライアンス形成を含む事業戦略全体において重要な役割を果たすことが示されました。
(3)標準化活動による仲間づくり
最後に齋藤氏は、知財戦略をさらに発展させた視点として、「バリューチェーン」と「ルールメイキング」について解説しました。
事業は「素材・パーツ・完成品・サービス」といったバリューチェーンで構成されますが、日本企業は特定領域で強みを持ちながらも、全体構造を設計する側に回れていないことが、競争で劣後する一因であると指摘します。
この状況を打開するには、自社領域にとどまらず、完成品やサービス側の特許を先回りして取得し、それを起点に他社と連携していくことが重要です。特許を無償で開放することで、自社技術やパーツが組み込まれた製品・サービスの普及を促し、市場の中でのポジション確立につながるケースがあるといいます。
具体例として挙げられたのがQRコードです。企業が開発した技術が標準化され、広く普及したことで、現在ではインフラとして定着しています。このように、技術単体で収益化するのではなく、バリューチェーン全体に組み込むことで価値を最大化するという発想が重要になります。
さらに、こうした考え方は「ルールメイキング」とも密接に関係します。市場の標準や構造そのものを設計することで、継続的な優位性を築くことが可能に。特許はその起点のひとつであり、最終的にはエコシステムの構築へとつながっていきます。
齋藤氏は、まず自社の技術やサービスを特許化することに加え、将来を見据えた「攻めの特許」を積み重ねていく重要性を強調しました。その上で、AIの活用も含めて発想を広げ、事業の枠を超えた構造設計へとつなげていくことが、これからの成長において不可欠であると述べ、セッションを締めくくりました。
パネルディスカッション

続いて行われたパネルディスカッションでは、齋藤氏に加え、ON&BOARD株式会社 Partnerの長谷川俊介氏が登壇。
キャピタリストとして数多くのスタートアップを支援してきた長谷川氏の視点も交えながら、知財戦略を「実務としてどう捉えるべきか」に焦点を当て、事業フェーズに応じた考え方や現場での課題、そして今後求められる戦略について議論が展開されました。
具体的には、「知財戦略を考え始めるべきタイミング」「現場での成功・失敗事例」「これからのスタートアップに求められる知財戦略」という3つのテーマを軸に、具体的な知見が共有されました。
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【登壇者】
ON&BOARD株式会社 Partner
長谷川 俊介 氏
2009年三菱商事に入社。防衛・自動車関連のトレーディング業務、在インドネシア自動車販社における商品企画・販売のOperation主導、本社投資委員会における多数の投資・事業再生・撤退案件の稟議、自動車事業本部の戦略立案等、幅広い業務に従事。
日本の産業競争力の変化を目の当たりする中、「日本発のイノベーション創出により直接的に関わりたい」との思いから、ON&BOARD創業に参画。
一橋大学法学部卒(在学中、英国Warwick大学Politics & International Studies留学)。
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①スタートアップは、いつ知財戦略を考え始めるべきか?
知財戦略を考え始めるタイミング
長谷川氏は、シード期のスタートアップへの投資において知財の話題は出るものの、現時点では意思決定の中心になるケースは多くないと説明しました。実際に、投資先の多くは特許取得の途上にある段階だといいます。
これに対し齋藤氏は、シード期においては必須ではないものの、シリーズA以降、機関投資家が関わるフェーズでは重要性が高まると指摘。特に投資判断のプロセスにおいて、知財が整備されていることは説明材料として有効であり、タイミングとしてはその直前が一つの目安になると述べました。
知財を後回しにするリスク
齋藤氏は、知財対応を後回しにした場合のリスクとして、将来的に権利面でのトラブル発生の可能性があることを指摘しました。
そのため、致命的なトラブルを避けるという観点でも、適切なタイミングでの知財対応が重要であると示されました。
投資家・事業提携から見た知財の位置づけ
長谷川氏は、投資家目線では知財の有無は一定の評価ポイントにはなるものの、その重要性は領域によって異なると説明。特にディープテック領域では重要度が高い一方、ソフトウェア領域では初期段階においては大きな評価軸にならないケースも多いといいます。
また齋藤氏は、日本の投資環境においては、知財が厳密にバリュエーションへ反映されるケースはまだ限定的であると指摘。その一方で、投資家から求められた際に説明できる状態を整えておくことが重要であり、今後は徐々にその重要性が高まっていく可能性にも言及しました。
②「ここは苦労した。これは早くやってよかった」など、支援してきたスタートアップの実際の声は?
続いて、支援現場の実感として、スタートアップが直面する知財戦略の難しさについても議論が行われました。
長谷川氏は、「知財を取りたいがどう進めればよいか」という相談は多い一方で、実際には取り得る選択肢が多く、判断が難しい領域であると指摘します。
これに対し齋藤氏は、特に重要なポイントとして「どの切り口で特許化するか」の見極めを挙げました。開発者が重視するポイントと、特許として価値が出やすいポイントにはズレが生じやすく、そのギャップを理解することが重要であるといいます。実際、こだわりが強すぎるあまり、適切な戦略を取りきれないケースも見られるとのことです。
また、ビジネスモデル特許においては、技術の複雑さよりも「どのような価値や体験を生み出すか」が重視されます。シンプルな構造でも成立し得る一方で、要素を詰め込みすぎると権利範囲が狭まるため、適切な抽象化が不可欠であると指摘されました。
さらに出願の進め方としては、アイデアを個別に出すだけでなく、複数の案をまとめて整理し、後から選別する方法も有効であると説明。限られたリソースの中で投資対効果を見極めながら、戦略的に進めていく必要性が示されました。
③これからのスタートアップにとって、勝てる知財戦略とは?
このテーマについては、まず齋藤氏より、エコシステム全体を見据えた設計の重要性が語られました。
自社単体で完結するのではなく、「誰に何を担ってもらうのか」を仮説ベースでも具体的に描くこと。その上で、各プレイヤーに関連する領域まで含めて特許を検討することで、より戦略的な知財活用につながるといいます。事業計画とあわせて、高い視座からエコシステムを構想することがポイントです。
また、AI活用における知財リスクについては、「調査を優先すべきか、出願を優先すべきか」という問いに対し、齋藤氏は「まずはアイデア創出に注力すべき」と指摘しました。特許は出願から一定期間公開されないため、現時点で把握できる情報だけで判断することには限界があるためです。
とりわけAI分野では技術の進展が速く、事前調査の網羅性にも限界があります。そのため、他社動向を過度に気にするよりも、新しいアイデアをいち早く形にし、出願につなげることが重要であると強調されました。
実際に、特許出願数の増加やAIを活用した大量出願の動きも見られており、「1日でも早く出す」ことの重要性は、今後さらに高まっていく可能性が示唆されました。
セッションの終盤には、参加者からの質問に登壇者が答えるQ&Aコーナーを開催。実務に即した具体的な問いが寄せられ、専門家の立場からの見解が共有されるなど、理解を一層深める機会となりました。
ネットワーキング・懇親会
イベントの締めくくりには、登壇者・参加者によるネットワーキング・懇親会の時間が設けられました。
会場にはドリンクと軽食が用意され、立食形式での交流がスタート。参加者は自由に行き来しながら、名刺交換や情報交換を行いました。
セッション内容を踏まえた意見交換や、実務に引き寄せた具体的な話題も見られるなど、対話が広がる時間に。参加者それぞれが新たな視点やつながりを持ち帰る、穏やかな交流の場となりました。
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今回のイベントでは、AIの進展や競争環境の変化を背景に、スタートアップにおける知財戦略の重要性が多角的に掘り下げられました。
齋藤氏によるトークセッションでは、事例を交えながら、知財を「守り」にとどめず、事業成長を加速させるための戦略として捉える視点を共有。さらにパネルディスカッションでは、起業家・投資家の視点も交えながら、事業フェーズごとの向き合い方や現場でのリアルな意思決定について具体的な示唆が提示され、実務に直結する学びの多い内容となりました。
知財を専門領域の話として切り離すのではなく、エコシステム設計や事業戦略と結びつけて考えること。その重要性が、さまざまな角度から浮かび上がったと言えるでしょう。
INTLOOP Venturesでは、今後もスタートアップ、事業会社、投資家といった多様なプレイヤーがつながり、実践的な知見を共有できる場を継続的に提供していきます。今後の取り組みにもぜひご注目ください。
イベントの概要
18:00~20:30
