Event イベント情報
スタートアップM&Aの最前線を学ぶ|INTLOOP Ventures 勉強会(2025年8月)
- 開催日
- 2025.8.25
- 開催場所
- INTLOOP本社内 Cafe INTLOOP
2025年8月25日、INTLOOP株式会社のスタートアップ支援プログラム「INTLOOP Ventures」は、スタートアップM&Aをテーマとした勉強会イベントを開催しました。
本イベントには、多くのM&A・投資ディールに携わってきたプロフェッショナルが登壇。M&A市場の最新動向から、売却や提携を見据えた準備の実際、さらには上場・非上場それぞれの立場での戦略的な選択肢まで、多角的に語られました。
一般的な情報では触れにくい、現場の経験に基づくリアルな視点や意思決定のプロセスに迫ることができた今回の勉強会。後半には参加者同士のネットワーキングの時間も設けられ、情報交換などの交流も活発に行われました。
この記事では、イベント当日の様子を写真とともに振り返ります。M&Aを成長戦略・EXITの選択肢として検討しているスタートアップ経営者の方はもちろん、事業会社の新規事業担当者や投資家の方にとっても、示唆に富む内容となっています。
INTLOOP Ventures 勉強会「スタートアップM&Aの最前線を学ぶ」

【実施日時】
2025年8月25日(火)18:00〜20:30
【タイムテーブル】
17:30〜18:00 受付
18:00〜18:15 オープニング
18:15〜18:45 トークセッション
18:45〜19:35 パネルディスカッション/Q&A
19:35〜20:30 懇親会/ネットワーキング
【実施場所】
INTLOOP本社内 Cafe INTLOOP
〒107-0052
東京都港区赤坂2丁目4−6 赤坂グリーンクロス27F Cafe INTLOOP
オープニング
冒頭では、モデレーターを務めるINTLOOP株式会社の廣瀬より、参加者の皆さまへご挨拶を行いました。
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廣瀬 明
マーケティング・コミュニケーション統括本部 統括副本部長
青山スタートアップアクセラレーションセンター 専門メンター
情報経営イノベーション専門職大学 客員准教授
関西大学経済学部卒業
INTLOOP株式会社にて最年少バイスプレジデントとしてマーケティング部門を統括。BtoC(人材)/BtoB(メディア)双方のデジタルマーケティング戦略を手掛け、登録者数を3,000名から50,000名へ、オウンドメディアをゼロから月間40万PVへグロースさせた実績を持つ。広告運用やSEOの戦術レベルから、全社予算管理や事業戦略立案といった経営レベルまで一気通貫で担当。近年は事業シナジー創出を目的とした資本業務提携やファンド出資などもゼロから主導。マーケティングを軸とした事業グロースだけでなく、経営視点での戦略壁打ちやアライアンス戦略まで、起業家の挑戦を多角的に支援。
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まず、INTLOOP社について簡単に紹介がありました。今年、創業から20周年を迎えたINTLOOPは、現在グループ全体で約1,300名規模に拡大し、2025年7月期の売上は300億円を突破。地方都市を中心に全国へ拠点を展開し、さらなる成長を続けています。
事業の柱となっているのは、約49,000名のプロフェッショナル人材データベースを活用した柔軟な人材活用モデル。コンサルティングやPMO支援を担う社員と、1名単位でアサインできるフリーランス人材を組み合わせ、クライアントの課題や予算に応じて最適なチーム体制を提案しています。特にデジタルトランスフォーメーション分野を中心に、幅広い支援を展開している点が特徴です。
続いて紹介されたのが、スタートアップ支援の取り組み「INTLOOP Ventures」。その中核である「INTLOOP Ventures Innovation Community(IVIC)」では、スタートアップに必要な「ヒト・モノ・カネ・情報」を結び、CVC的な活動を通じた投資や発掘、スタートアップ同士の連携やVCとのマッチング支援などを展開しています。強みである人材支援を軸に、最終的にはスタートアップの成長を後押ししたいとの想いが語られました。
活動内容としては、月2回程度のイベントの開催、Slackを活用したコミュニティでの交流、さらに情報発信メディアの運営といった3つの柱を展開。参加者同士が学び合い、つながり合うことで新たな価値を創出しながら、自社の事業機会を生み出すことを目指しています。
また、この日の会場となった「Café INTLOOP」にも言及がありました。4月に完成したばかりのオフィス兼イベントスペースであり、参加者はその新鮮な雰囲気を実際に体感。さらに、スタートアップやVCがイベントを共催できる「箱貸し」にも対応しており、コミュニティに参加する大きな魅力の一つとして紹介されました。
「INTLOOP Ventures」とは
INTLOOP Venturesは、スタートアップとの共創を通じて社会・産業課題の解決を目指す、INTLOOPのスタートアップ支援プログラムです。INTLOOPが20年以上にわたりコンサルティングとプロフェッショナル人材支援を通じて培ってきた、人材ネットワーク・企業ネットワーク・知見を活かし、先端技術を有するスタートアップと連携し、2030年に向けて懸念される労働人口の減少や生産性の低下といった構造的な社会課題の解決に挑んでいます。協業型アクセラレータープログラム「INTLOOP Ventures Accelerator(IVA)」や、事業共創を支援する「INTLOOP Ventures Innovation Community(IVIC)」を通じて、資金・リソース・ネットワークの提供により、実効性あるイノベーション創出を後押ししていきます。

トークセッション
トークセッションには、株式会社Finance Produce共同創業者であり、スタートアップM&AにおけるセルサイドFAの第一人者・松井克成氏と、ベンチャーキャピタルのON&BOARD株式会社 代表取締役・中山航介氏が登壇しました。
「スタートアップM&Aの最前線を学ぶ~セルサイドFAのプロにVCが迫る~」をテーマに、国内でも希少なポジショニングを持つ松井氏に対し、中山氏が質問を投げかける形で進行。「スタートアップM&Aの最新動向」と「売却価値を最大化するためのポイント」を軸に、多様な話題が展開されました。
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【登壇者】
松井 克成 氏
株式会社Finance Produce 共同創業者 米国公認会計士
慶応大学法学部卒。ドリームインキュベータ(DI)で自ら立ち上げた新規事業をカーブアウト・MBOする形でファイナンス・プロデュースを共同創業・起業。主にスタートアップM&AにおけるセルサイドFA業務をはじめ、国内外スタートアップと大企業や政府系ファンドとの資本業務提携やM&A、資本政策や成長戦略を支援。2022年10月、東大発AIスタートアップとして東証グロース市場に上場したJDSCグループにジョイン。
中山 航介 氏
ON&BOARD株式会社 代表取締役
上智大学大学経済学部卒。2016年にドリームインキュベータ(DI)参画。日本・インドでのスタートアップ出資・支援、大企業向けコンサルティングに従事。2019年にベンチャーキャピタルの立ち上げに参画し、これまでに投資先5社がエグジット。2022年にZ ホールディングス(現、LINEヤフー)入社、主要サービスのエコノミクス算出、中計策定、グループ企業統合に従事。2023年、ベンチャーキャピタル「ON&BOARD」を共同創業。
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①スタートアップM&Aの最新の事例・動向
まずセッションの前半では、スタートアップM&Aの最新動向が紹介されました。ここ3年で件数は右肩上がりを続けており、特にこの半年は「IPOを目指せる成長企業」があえてM&Aを検討するケースが増えていると松井氏は指摘。これまで「IPOを諦めてM&Aへ」という流れが多かったのに対し、「IPOも選択肢に残しながらM&Aも視野に入れる」というスタンスが広がっているのが新しい傾向だといいます。
具体的な動きとしては、大企業が従来以上にM&Aに参入し始めていること、PEファンドによるグロース企業への投資が出てきていること、スタートアップ自身がロールアップ型M&Aで規模拡大を図る事例が増えていることなどが共有されました。さらに「スイングバイIPO」という新しい選択肢にも注目が集まり、今後のトレンドを占う上でのポイントになりそうだと議論が深まりました。
②売却価値を最大化するためのM&Aとは
続いて話題は「M&Aで売却価値をどう高めるか」に移りました。松井氏は「ピンチの最中に売却を検討するのは避けるべき」とし、むしろ成長途上で複数の選択肢を持ちながら交渉に臨むことが望ましいと強調。一般的には「買う前8割・買った後2割」と言われますが、むしろ買い手側は「買収後の統合設計が8割」という意識を持たなければ失敗に陥りやすいと警鐘を鳴らしました。
また、M&Aの目的を総花的に広げすぎるのではなく、「最低限達成すべきこと」を明確にし、買い手・売り手双方で合意しておくことが、統合後の摩擦を防ぐうえで不可欠だという実務的な指摘もありました。さらに、中山氏は「M&Aはゴールではなく、事業成長のための一つの戦略手段」と述べ、起業家には日頃から情報収集やネットワーク構築を怠らない姿勢が求められると補足しました。

③周辺の論点
M&Aの動向や価値最大化という枠組みに収まりきらない論点についても触れられました。
まず挙げられたのが、スタートアップも買い手となる大企業も「M&Aリテラシー」を高める必要性です。日本でも近年着実に水準は上がってきているものの、欧米に比べるとまだ途上の段階であり、成功事例の積み重ねがマーケット全体の成熟につながると話されました。
また、大企業側の視点からは「社内調整や意思決定プロセスがM&Aの大きなハードルになる」という現実も共有。新規事業への期待はあっても、組織文化や人材特性が「ゼロイチ」に向かないことが多く、そのギャップを埋めるのに苦労するという声もあります。こうした見えない壁を乗り越えるためには、売り手・買い手双方の歩み寄りと経験の蓄積が欠かせないとまとめられました。
パネルディスカッション/Q&A
続くパネルディスカッションでは、松井氏・中山氏に加え、株式会社クラウドワークス執行役員/M&A担当・酒井亮氏が登壇。
酒井氏は、自社での買収案件をリードし、買収した「クラウドログ」を約5年で10倍規模に成長させた経験を持つ実務家です。本セッションでは三者それぞれの視点から、テーマ「事業会社・FA・VCが語る!スタートアップM&A成功の秘訣」について語られました。
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【登壇者】
酒井 亮 氏
株式会社クラウドワークス 執行役員 / M&A担当
明治大学政治経済学部卒業。2016年、クラウドワークスに新卒で入社。フリーランスのエンジニア・デザイナー向けエージェントサービス「クラウドテック」の事業立ち上げ、CtoCスキルプラットフォーム「サイタ」の事業マネジメント、生産性向上SaaS「クラウドログ」の買収から事業マネジメントを行い、約5年で買収時の10倍まで成長。2023年より執行役員として全社業績管理とAI事業の買収・立ち上げ、2024年よりM&Aを担当。
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①事業会社にとって魅力的な「スタートアップ」とは
最初の論点は、「事業会社にとって魅力的なスタートアップとは何か」。
単に「売りたい」ではなく、「事業をもっと伸ばすためにM&Aを活用したい」という姿勢が大前提だと指摘されました。買い手にとっては、自社の成長につながるかどうかが最大の関心事。そのため、既存顧客への提案方法や具体的な施策まで示せる企業は評価が高いといいます。
また、VCが重視する将来の成長性と、事業会社が見るシナジーの確実性はズレやすいという指摘も。その溝をどう埋めるかが交渉のポイントになり、FAの役割も大きいとまとめられました。
②実際にあったM&A成功・トラブル事例
続いて話題は「成功するM&Aとは何か」へ。
成功の定義は「買い手・売り手それぞれが当初の目的を達成すること」としつつ、実際には競合状況や業界での立ち位置によって大きく条件が変わることが紹介されました。複数の買い手候補がいる場合は条件が好転しやすい一方、日本では単独交渉になるとどうしても買い手が有利になりやすいという現実も共有されました。
さらに交渉時の情報開示リスクや、M&Aに不慣れな売り手が不利な条件を受け入れてしまうケースについても言及。ここでFAやVCが調整役を担うことで、当事者同士の関係をこじらせずに交渉を進められるという実例が紹介されました。
③PMIをうまく進めるために、準備すべきこととは?
最後のテーマは、買収後の統合=PMI(Post Merger Integration)。
M&Aは「契約して終わり」ではなく、むしろそこからが本番。シナジーを過度に期待しすぎて無理な数値目標を掲げると、PMIの現場が疲弊してしまうリスクがあると注意が呼びかけられました。
その上で、経営陣がどれだけコミットするか、スタンドアローンでも成立する計画を用意できるかなど、事前準備の重要性が強調されました。さらに、売り手側が価格や数字ばかりを優先すると信頼を損ないやすく、「一緒にやっていけるか」という感覚を持てる相手ほど好まれるとの意見も一致しました。最終的には、現実的な計画と信頼関係の構築が、中長期的な成功につながるというのがパネリストの共通見解でした。

セッションの締めくくりには、参加者から寄せられた質問に答えるQ&Aコーナーを開催。質問は「Slido」を通じてリアルタイムで回収され、その場で応えきれないほど多くの問いが寄せられる盛況ぶりに。
登壇者がそれぞれの立場から丁寧にコメントし、現場感のある視点や具体的なアドバイスを共有する有意義な時間となりました。
懇親会/ネットワーキング

イベント終盤には、懇親会・ネットワーキングの時間が設けられました。
開放的でありながら温かみのある空間で、参加者同士が軽食やドリンクを片手にリラックスしながら交流を楽しむ姿が見られました。
登壇者に直接質問する参加者や、それぞれの課題意識を持つ起業家同士が活発に意見交換する場面も多く、名刺交換や情報共有を通じて新たな連携の可能性が芽生える場に。
Cafe INTLOOPのイベントスペースとしての特徴や魅力も直に体感いただける、前向きなひとときとなりました。
【当日のご提供メニュー@Cafe INTLOOP】
■ブリトー
トルティーヤを使ったラップサンド
レモンペッパーのチキンステーキ味/プルコギ味
■ピンチョス
モッツァレラチーズ・バジル・生ハム・キウイ
■フリッタータ
しめじ・玉ねぎ・パプリカ・ジャガイモ・ズッキーニ・ロースハムを使ったオムレツ
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今回の勉強会では、スタートアップM&Aの現場で活躍するFA・VC・事業会社それぞれの立場から、最新動向や価値最大化のポイント、そして実務で直面する課題まで幅広く語られました。一般論では語りにくい「生々しいリアル」を共有いただけたことで、参加者にとって大きな学びや気づきがあったのではないでしょうか。
また、Q&Aセッションやネットワーキングを通じて、登壇者と直接対話したり、同じ課題意識を持つ起業家や事業会社担当者同士が交流する貴重な機会にもなりました。こうした相互作用が、新たな連携や支援の芽を育む契機となれば幸いです。
今後もINTLOOP Venturesでは、スタートアップや事業会社、投資家の皆さまにとって有意義な学びと出会いの場を提供してまいります。次回の勉強会・各種イベントにもぜひご期待ください。
イベントの概要
18:00~20:30