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【2025年7月】INTLOOP Ventures 勉強会レポート|IPOのリアルと上場後の経営戦略

開催日
2025.7.29
開催場所
INTLOOP本社内 Cafe INTLOOP

2025年7月29日、INTLOOP株式会社のスタートアップ支援プログラム「INTLOOP Ventures」は、IPOをテーマとした勉強会イベントを開催しました。

本イベントでは、実際にIPOを経験したスタートアップ経営者に加え、証券会社で主幹事業務を統括するプロフェッショナルが登壇。IPOに至るまでの準備プロセスから、審査対応に求められる判断軸、さらには上場後の経営体制の構築や戦略の見直しに至るまで、企業側と証券会社側それぞれのリアルな視点から、多面的に語られました。

書籍やインターネットでは得難い、実務に根ざした意思決定の裏側や葛藤に触れられる貴重な機会となった本勉強会。後半にはネットワーキングの時間も設けられ、起業家同士の交流も活発に行われました。

この記事では、当日のセッションの様子を写真とともに振り返ります。IPOを視野に入れるスタートアップ経営者の方はもちろん、今後の組織づくりや経営戦略に関心のある方にも、ぜひ参考にしていただきたい内容です。

INTLOOP Ventures 勉強会「IPOのリアルと上場後の経営戦略」

INTLOOP Ventures 勉強会「IPOのリアルと上場後の経営戦略」

【実施日時】

2025年7月29日(火)18:00〜20:30

 

【タイムテーブル】

17:30〜18:00    受付

18:00〜18:15    オープニング

18:15〜19:00    トークセッション「IPOまでの道のりと上場後の経営戦略」

19:00〜19:45    パネルディスカッション「スタートアップがIPOに向けて留意すべきこと」/Q&A

19:50〜20:30    懇親会/ネットワーキング

 

【実施場所】

INTLOOP本社 

〒107-0052

東京都港区赤坂2丁目4−6 赤坂グリーンクロス27F  Cafe INTLOOP

オープニング

イベントの冒頭では、ファシリテーターを務めるINTLOOP Strategy株式会社の東條より、参加者の皆さまへ挨拶を行いました。

まず、INTLOOP社について簡単に紹介がありました。2005年の創業から20年目を迎え、2024年7月期には売上270億円、連結社員数は約1,200名へと拡大。主力事業として、約5万人のフリーランスコンサルタントやITエンジニアと企業をつなぎ、コンサルティングや開発支援をはじめとする多様なサービスを展開しています。

続いて、スタートアップ支援プログラム「INTLOOP Ventures」についての説明へ。「ヒト・モノ・カネをつなぐ」ことを軸に、スタートアップと企業、VC・投資家を結ぶ取り組み「INTLOOP Ventures Innovation Community(IVIC)」や、月1~2回のオフラインイベントを実施していると紹介しました。これまでに、4月にはAIスタートアップとVCをつなぐピッチ相談会、5月にはストックオプション戦略をテーマにした勉強会を開催し、本イベントがその第3弾となります。

最後に、「このコミュニティを通じて、学び合い、つながり合い、実効性あるイノベーションを生み出すきっかけをつくっていきたい」と呼びかけ、Slackを活用したオンラインコミュニティへの参加も促しました。

 

トークセッション「IPOまでの道のりと上場後の経営戦略」

トークセッションには、株式会社ボードルア代表の藤井和也氏、株式会社ビースタイルホールディングス代表の三原邦彦氏、そしてINTLOOP株式会社代表の林博文が登壇。自己紹介に続き、3名それぞれの視点から、創業からIPOに至るまでの道のり、IPO決断後の経営の変化、そして上場後の経営戦略について、体験談や意見を交わしました。

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【登壇者】

藤井 和也 氏

株式会社ボードルア 代表取締役

2007年に株式会社ボードルアを友人と創業。 会計経理財務、法務人事労務、コーポレートガバナンスなどバックオフィス業務全般を構築し2021年に東証マザーズ市場(現グロース市場)に上場。IR、M&Aを推進し2025年に東証プライム市場へ鞍替え。 

またエンジェル投資家としても活動。IPO支援などを通じて、次世代の起業家支援も行う。

三原 邦彦 氏

株式会社ビースタイルホールディングス 代表取締役社長 

大学在学時から株式会社インテリジェンス(現・パーソルキャリア株式会社)にて派遣事業の立ち上げに従事。卒業に伴い同社に入社。2000年に同社の子会社であるECサーブテクノロジー株式会社の代表取締役に就任。2002年に幼馴染の増村一郎氏と株式会社ビースタイル(現・株式会社ビースタイルスマートキャリア)を設立。2020年にホールディングス化し、株式会社ビースタイルホールディングスの代表取締役社長に就任。

林 博文

INTLOOP株式会社 代表取締役

アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア株式会社)、スタートアップベンチャー企業、再度アクセンチュアを経て、2005年2月にINTLOOP株式会社を創業。

事業戦略、BPR、プロジェクトマネジメントなど、幅広いコンサルティング経験を有する。起業後は自身の得意とするコンサルティング事業を行い、2015年より積極的投資を行う攻めの経営へ方針転換。自らのコンサルタント経験を活かしたフリーランスコンサルタント活用事業を皮切りにテクノロジー分野でのソリューション開発、マーケティングの知見を活かしたWEBサービス事業、PMO事業、転職支援と社会課題に即した事業を次々展開。社会ニーズを見極める洞察力と事業推進力で「自らが事業創造を行うコンサルティングファーム」としてINTLOOPを成長させ続けている。

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①創業からIPOまでの道のり

最初のテーマでは、3名の登壇者が「創業に至った経緯」「事業成長の手ごたえ」「IPO決断後の経営の変化」について、それぞれの実体験をもとに語りました。

藤井氏(ボードルア)は、学生時代の起業から事業を拡大し、従業員100名を超えた段階で「仲間への報い」と「持続的成長」を意識し始めたことがIPOを目指す転機となったと説明。組織を属人化から脱却させ、次世代を育てる体制づくりに注力したと語りました。

三原氏(ビースタイルホールディングス)は、労働人口減少という社会課題に挑む中で、主婦の雇用やRPAなどのテクノロジーを組み合わせた多角的なソリューションを展開。大企業から中小企業まで「働き方の選択肢を広げる」取り組みを進め、長期的なビジョンのもとでIPOを実現したと振り返りました。

林(INTLOOP)は、フリーランスエンジニア・コンサルタント支援のビジネスを軸に事業を拡大。資金繰りの課題をきっかけにIPOを決断したといいます。上場を機に「公私混同を徹底的に排除し、経営の在り方を変えた」ことが大きな転機だったと語り、権限移譲や子会社設立を通じて、盤石な経営体制の構築を進めていると明かしました。

 

②IPOと上場後の経営戦略

続くテーマでは、IPO実現に向けた苦労や上場後の経営課題について、3名が実体験をもとに語りました。

藤井氏は、IPO準備における「徹底的な理解と主体性」の重要性を強調。証券会社任せにせず、自ら学び、成長性をどう伝えるかを主体的に設計したといいます。上場後は株価形成や事業計画の精度向上に注力し、トップ自らが現場で行動することで、組織全体に責任感と一体感を醸成していると述べました。

三原氏は、コロナ禍での事業停滞と組織の混乱を乗り越えた経験を共有。競争優位性のあるサービスを確立するため、「しゅふJOB」への集中投資を進め、真似されない強みづくりに挑戦したと語りました。

林は、証券会社の選定を途中で変更する決断を下したことが上場成功のポイントになったと振り返ります。上場後は、IRや株価への対応、そして幹部人材の強化を最重要課題と位置づけ、内部昇格と外部採用を組み合わせて組織の進化を図っていると説明しました。

 

③IPOを目指すスタートアップへの心構え

最後に、IPOを志す起業家へのメッセージとして、3名がそれぞれの視点から「心構え」を語りました。

藤井氏は、「何のために、誰のために上場するのか」を明確にすることが重要と指摘。上場はゴールではなく、より大きな期待と責任を背負って挑む「新たなゲームの始まり」だと強調しました。

三原氏は、上場後を見据えた時価総額経営と成長ストーリーの構築の必要性を提示。上場基準のクリアだけでなく、調達資金をどのように事業成長へ投資するかを明確に描くことが不可欠だと述べました。

林は、上場後のプレッシャーに耐え抜く覚悟の重要性を強調。株価やIRへの対応を含め「気持ちの問題」が大きく影響するとしつつ、「自分でケチをしない」という先輩経営者からの教えも共有し、覚悟と決断の大切さを呼びかけました。

パネルディスカッション「スタートアップがIPOに向けて留意すべきこと」/Q&A

続くパネルディスカッションでは、「証券会社に聞く!スタートアップがIPOに向けて留意すべきこと」と題し、証券会社の視点からIPO準備における実務的なポイントや、上場審査に対応する上で求められる姿勢について深掘りました。

登壇いただいたのは、東海東京証券株式会社の佐藤純氏。25年以上にわたり証券業界で法人営業や投資銀行業務に従事し、現在は東京地区におけるIPO主幹事獲得業務を統括するなど、豊富な実績を持つインベストメント・バンカーです。

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【登壇者】

佐藤 純 氏

東海東京証券株式会社 東京企業金融部長

1995年新日本証券(現みずほ証券)入社、1997年より2011年まで一貫して事業法人・投資銀行業務に従事。主としてサービス業界、TMT業界を担当し、エクイティ・ファイナンス、M&A、財務戦略アドバイザリーや敵対的買収防衛コンサルティングなど多数の案件を自ら創出、執行。

2012年より未上場企業のコーポレート本部長として経営全般に携わった後、2013年マネックス・ハンブレクト入社、M&Aオリジネーション業務に従事。

2014年東海東京証券入社、2023年10月より現職。東京地区におけるIPO主幹事獲得業務を統括。

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①証券会社から見たIPOの最新動向

冒頭では、最近のIPO市場で特に注目されている「グロース市場の時価総額100億円ルール」が取り上げられました。

2025年4月、「東証、新興企業の上場維持厳しく」という報道があり、グロース市場に上場して5年後に時価総額100億円を超えていなければ上場廃止となる方針が発表されました。実際、現在の上場企業の約7割がこの基準を満たしていない状況です。

こうした背景から、IPOに対して慎重になる企業も増えていますが、東海東京証券では「有望スタートアップ企業支援」を重要なミッションと位置づけており、たとえ上場時に100億円に届かなくても、成長性や独自性がある企業であれば積極的に支援しているとの考えが説明されました。

 

②IPO準備における留意点

続いては、IPO準備における実務上の留意点について、実際の相談や事例を交えながら解説が行われました。

佐藤氏はまず、IPOの審査では「整備が形式的なものにとどまらず、魂が入っているかどうか」が見られていると強調。証券会社の引受審査部はもちろん、東証も企業の本質的な姿勢や仕組みの“中身”を厳しくチェックしていると語ります。

具体的には、

  • 機関設計:企業の実態に即したガバナンス体制を構築しているか
  • 内部監査:業務の実効性を高めるモニタリング体制があるか
  • 関連当事者取引・株主との関係:ガバナンスの健全性を担保できているか

といった点が、審査上の重要項目として挙げられました。

 

③主幹事証券会社との向き合い方

IPOを目指す上で避けて通れないのが、主幹事証券の存在です。佐藤氏は、「ぜひ当社で主幹事を務めたい」と思わせる企業には、共通する3つの要素があると語ります。

1つ目は、事業の魅力と独自性。

プロダクトやサービスに、従来の常識を覆すようなインパクトがあるか。競合との差別化が明確であり、その優位性を裏付ける根拠があるか。証券会社はここを非常に重視します。

2つ目は、IPOを目指す理由が明確であること。

上場はゴールではなく、あくまで成長の通過点。中長期的な成長ストーリーが描かれており、たとえ経営の自由度が制限されるとしても、それを超える意義や戦略があるかどうかが問われます。

3つ目は、経営者の本気度と真摯な姿勢。

社会的意義のある事業を、地道に積み上げながら実現しようとする実直さ。ステークホルダーに価値を提供し続ける覚悟。そのような経営者の“まっすぐさ”に、証券会社は惹かれるのだといいます。

主幹事証券の選定について、佐藤氏は、「会社」ではなく「人」で選ぶべきだと強調しました。IPOは2年以上にわたる長期プロジェクトであり、カバレッジや公開引受の担当者が事業を深く理解し、発行会社に対して強い関心と熱意を持てるかが重要なポイントです。発行企業の経営陣と証券会社担当者との相性や信頼関係の構築も、成功への大きな要素になると語られました。

具体的な事例として、INTLOOP社が主幹事に東海東京証券を選定した際の経緯も紹介されました。複数社を比較検討したうえで、東海東京証券の提案内容の質と熱意が評価され、選定に至ったとのこと。初期段階から成長戦略を描き、それをベースに上場に向けたストーリーを構築する支援体制も、高く評価されたポイントの一つであったと語られました。

セッションの最後には、参加者から寄せられた質問に対し、登壇した3名の経営者と、証券会社の佐藤氏がそれぞれの視点から回答するQ&Aタイムが設けられました。

「この時代にIPOを目指す意味」についての問いや、組織運営に関する実践的な質問など、「IPOのその先」を見据えた視座や、経営現場で役立つ具体的な示唆が多く得られる、有意義な時間となりました。

懇親会/ネットワーキング

イベント後半には、立食形式の懇親会・ネットワーキングの時間も設けられました。

軽食やドリンクを片手に、登壇者である経営者や証券会社のプロフェッショナルと直接言葉を交わせる貴重な場となりました。また、同じような課題意識を持つ起業家同士の交流も盛んに行われ、名刺交換や情報共有を通じて、新たな連携や支援のきっかけとなる場面も。視座を高め合いながら、次のアクションへのヒントを得る前向きな対話が繰り広げられました。

知見を深めるだけでなく、リアルな“つながり”を築ける。そんな実践的な学びと出会いに満ちたネットワーキングとなりました。

 

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今回のイベントでは、IPOを経験した経営者と証券会社のプロフェッショナルを迎え、IPOに向けた準備の実際から上場後の経営戦略までを多角的に学ぶ貴重な機会となりました。

「なぜ上場するのか」という根本的な問いへの向き合い方や、上場後を見据えた成長ストーリーの描き方、証券会社が重視する視点など、実務と経営判断の両面で役立つ視座が共有され、参加者はそれぞれの立場から自社の戦略を見直すヒントを得ていました。

IPOを単なるゴールではなく、持続的な成長と価値創造のためのプロセスとして捉えるための視点を深める、有意義な学びの場になったといえるでしょう。

今後も、「INTLOOP Ventures Innovation Community(IVIC)」では、常設のオンラインコミュニティ(Slack)の拡充に加え、さまざまなミートアップイベントを定期的に開催し、オンラインとリアルの両面からコミュニティの活性化を図っていきます。

引き続き、スタートアップ支援のモデルを進化させながら、日本全体のイノベーション創出に貢献してまいります。

イベントの概要

開催日時
2025.7.29 ~ 2025.7.29
18:00~20:30
開催場所
INTLOOP本社内 Cafe INTLOOP
〒107-0052
東京都港区赤坂2丁目4−6 赤坂グリーンクロス 27F
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銀座線・南北線「溜池山王」駅10番出口直結
料金
無料